大玉村で育てた藍で染めた暖簾

大玉村に4月末にオープンした「お食事処たまちゃん」の暖簾と暖簾掛けを歓藍社が制作しました。

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この暖簾の見どころ  渡辺未来

特別な色

藍を育て、収穫して発酵させ、作った染料を蒅(すくも)といいます。歓藍社でつくった蒅を使って、初めて染めたのがこの暖簾です。藍を育てるところから考えると、ほんとうにたくさんの人の手が関わっています。この暖簾の色の深さはちょっと特別なものです。 かつてわたしは、蒅をつくるなんて気が遠くなるくらい大変に思えて、やらなくてもいいんじゃないかと言っていましたが、いざ出来てみたら、濃縮されたインディゴで深い色に染まることが単純に嬉しかったです。

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後藤節子さんと伊藤浩子さんによる、染めの技術

歓藍社で藍を育て始めて3年目ですが、最近まで、染めは実験程度にしか行われていませんでした。染め方も雑でした。 最近、後藤節子さんや伊藤浩子さんはみんなに先駆けて、商品づくりをはじめました。どの作品も、お客さんのことを考えて、とても丁寧に作られています。商品は東京でとても人気で、売れたので、ふたりはどんどん作って、どんどん技術を高めていきました。このふたりに技術があることで、自信を持って暖簾の注文が受けられました。

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とても手間がかかる縫い絞り!

こんなに手間がかかると知っていたら、この技法は使わなかったかもしれません。 伊藤浩子さんがあまりに楽しそうに、じゃんじゃん縫い絞りの手拭いを染めているので、もっと色んな人に見せたい!と思い、縫い絞りで柄をつけることに決めました。 わたしは、浩子さんの縫い絞りの作品を参考に、仕上がりをイメージしながら図案を考えました。方向性を持って絞られた柄同士がぶつかって切り替わる、その美しさを際立たせようと考えました。青から白への階調に様々な表情をもたらす、絞りの柄そのものもきれいなのですが、わたしは、絞りの柄同士がぶつかるところ、人の思惑と思惑がぶつかっていることがただ現象となって現れていることに面白さと、ずっと見ても飽きない美しさとを感じています。 この縫い絞り作業を協働した人は、伊藤浩子さんを先導に、後藤節子さん、野内あきこさん、鈴木周子さん、佐瀬さん、鈴木絹子さん、はしもとさゆりさん、コムラマイさん、渡辺崇徳さん、わたしです。みんなでおしゃべりし、お茶を飲み、お菓子を食べながらやりました。普段浩子さんが家でひとりで黙々と楽しんでやっている、気が遠くなるような質と量の作業が、みんなに共有されました。その日だけでは全然終わらず、それぞれ持ち帰って終わらせました。

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鈴木周子さんの、きれいな縫製

はしもとさゆりさんが、これから新しくできる「染め場とカフェ」の庭に野菜を植えたいというので、野菜を育てるのが上手な鈴木周子さんに話を聞きに行こうと、伊藤浩子さんに連れて行ってもらったのがきっかけでした。野菜の話を聞いているうちに、周子さんが洋裁をやっていたという話が不意に出てきて、ちょうどいいタイミングだったので、わたしはチャンスを逃さず、暖簾の縫製をお願いしました。 縫製は、仕上げ作業でもあるので、すごく重要です。周子さんに頼んで、とてもきれいに仕上がりました。

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暖簾掛けと暖簾の調和

横幅が4.5メートルあり、縦幅が26センチ。こんなに極端な形は、ここ「お食事処たまちゃん」の店長鈴木さんの、客席を見通したいというこだわりで導かれた寸法です。 建築家の佐藤研吾さんはこの独特の寸法に合わせ、暖簾掛けを設計、制作しました。こんなつくりの暖簾掛け、他所にないと思います。美しい暖簾だけでなく、美しい暖簾掛けも作ることができる、それが歓藍社の数ある良いところのひとつです。

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暖簾掛けについて  佐藤研吾

暖簾掛けにはサクラ材が使われています。歓藍社の新拠点「染め場とカフェ」の工事に伴い、村内の民家の床を解体した際に出てきた材料です。50年は経過しているであろう材料ですがほとんど反りがない良質なものでした。そのサクラ材を用いて、空色の暖簾を吊り下げる6つのパーツを制作しました。古いモノに新たな命が宿り、天空で舞い踊る。暖簾が設置され、「お食事処たまちゃん」がオープンしたのはちょうど大玉村の田植えの時期です。大玉村の米作りを祝って、まるで空の上で6人が表情さまざまに、田植え踊りをしている光景を思い浮かべました。